2013年2月19日火曜日

レディネス診断は評価ではない

CLS Japan本部 網あづさ

「同じようなインプットに対しては、同じようなアウトプットが出るという一貫性」は安心感や納得感をもたらすと思います。日々雑多なことに追われ、社会が複雑になればなるほど、人間関係を雑に扱うようになり、そういった安心感や納得感に配慮する余裕がなくなるような気がします。

信頼関係は、相手が「期待していること」を「期待されているように対応すること」でお互いに納得・安心し、落胆や失望がない状態で養われると思いますが、そう考えるとき、いつも思います。なぜ、状況対応リーダーシップ®はいいのか。複雑に感じる人間関係や信頼関係をシンプルにしてくれ、うまく行動できるようにモデルそのものが教えてくれるからだと思います。

状況対応リーダーシップ®では、インプットを仕事に対する能力・意欲(レディネス)、アウトプットを能力・意欲を高めるための「リーダーシップ」ととらえ、下記のように、有効なリーダーシップはレディネスによって変わるとされます。

ある仕事に対して・・・
  • レディネス(能力・意欲)が低い場合、ひとつひとつ説明や指示を行う教示的なスタイルが有効
  • レディネスが中程度の場合、指示だけではなく支援も増やす説得的、あるいは参加的なスタイルが有効
  • レディネスが高い場合、指示も支援も減らす委任的なスタイルが有効


相手のレディネスにあわないリーダーシップ・スタイルをとることは、相手が「期待している働きかけ」を、自分が行なっていないことを意味します。相手は「期待しているように働きかけてくれない」と感じ、落胆や失望を感じます。このまま同じスタイルをとり続けると、何も成果が生まれないだけではなく、信頼関係が損なわれていきます。

状況対応リーダーシップ®は発表されてから40年以上、世界の仕事の場で使われてきました。多くの場合、部下に対する上司のリーダーシップという枠組みで使われてきましたが、部下のレディネスにあわないリーダーシップをとることは、部下を成長させないだけではなく、お互いに避けたくなるような人間関係に陥らせてしまうということがわかっています。

よく誤解されるのですが、レディネスは「評価」のために行うのではありません。成長目標を考えたり、成長までの経過報告のために「診断」するものです。「できる、できない」という「評価」を下しレッテルを貼ってしまうことは、部下のレディネス向上の可能性も、上司のリーダーシップ発揮の可能性も閉じてしまうことになります。

レディネスは、今どの程度の成長過程にあって、どのようにすれば成長するのかを考えるための指標です。そして、状況対応リーダーシップ®におけるリーダーシップは、リーダーの一方的なリーダーシップではなく、部下のレディネスに連動するリーダーシップであり、部下と上司で同じ指標を共有し、お互いに成長や成果について方策を練るための方法です。

「相手が期待していること」をレディネスの行動指標を使って具体的にとらえること、そしてレディネスに適合するリーダーシップ・スタイルを使って「期待されているように対応すること」、これが状況対応リーダーシップ®の2本柱だと考えています。

人々が活き活きと能力を発揮し、チームや組織や社会が活力を持つためには、「評価」ではなくレディネスを診断し、適合するリーダーシップを使って成長の機会をつくりだすことだと思います。お互いに可能性を見出し、期待し期待され、一貫性のあるコミュニケーションを継続することで、納得・安心する信頼関係がもたらされる、そんな人間関係のなかにいたいと思います。

*状況対応リーダーシップ®およびS.L.理論®は、株式会社AMIが管理する登録商標です。