2019年2月24日日曜日

変化を状況対応リーダーシップ®で実行する

CLS Japan本部 網あづさ

変化ってすごい?

長らく経営学の領域にいて、「変化」は、成長のためにやらなければならないこと、すごいこと、リーダーなら絶対に必要なこと。。。と教わってきました。

でも、日常にそんなにストレスを感じていなければ、「なぜわざわざ。。。」と思います。変化を起こすには、精神的にも身体的にも荷重がかかります、疲れます。

そんなにがんばらなくても、もうちょっと普通に変化をとらえられないかなと思います。
状況対応リーダーシップ®は、人的資源の活用をシンプルにとらえ、シンプルに実行する方法を教えてくれます。変化についても同様です。


必要に迫られている変化

「社会には数多くの大小のチームや組織があります。好んでリーダーの役割を引き受けている人もいれば、必要に迫られてリーダーの役割を担っている人もいます。好むと好まざるとにかかわらず、リーダーの役割を果たすとなれば、「変化を起こす」必要があります」、なるほど。

リーダーシップ研究の著名な学者ウォレン・ベニスは、「リーダーは変化を好まなければならない(p.377, Warren Bennis)」といいます。好んでリーダーになる人はおそらく積極的に変化を起こすでしょう。

変化を好んでいる人は積極的に変化をリードする役割をひきうけるのがいいと思います。どんな試練があっても、目的意識があるので頑張り抜けると思います。なにかしたいと強く思えば、どんな試練も乗り越えようという強い意欲が湧きます。

しかし・・・
組織に所属する人は、ちょっとしたリーダーの役割はそんなにいやではない、でも、上から、あるいは状況に迫られて「変化を起こさなければならない」とプレッシャーをかけられると、まず先に「あー面倒」と感じてしまうのではないでしょうか?

変化を起こすための労力、手間、時間、ストレス、いろいろなものが思い浮かびます。
「できればやりたくない」
「でも、やらなければならないことは理解できる」
「あまり外部からやれやれ言われるのは、やる気がなくなる」
「自分なりのペースでやらせてよ」
そんな気持ちかもしれません。

そこで、もし他人や環境から「変化を迫られている」とプレッシャーを感じている人、自分の状況を捉え直してみるのはどうでしょうか?
  • 環境にいる自分
  • 自分の周りに環境がある
自分はどっちにいるととらえていますか?
  • 環境にいる自分、環境からプレッシャーを受けている受け身の自分。
  • 自分の周りに環境がある、自分で環境をコントロールする。

変化に対する不安の研究

変化は、現状を捨てて新しい行動に移行するので、不安がつきまとうと言われます(p. 398、クルト・レビン、Kurt Lewin)。変化に対する不安には2つの危惧があるという研究がありますが(p.401エドガー・H・シャイン、Edgar H. Schein)、この研究では、「変化しないことへの不安」を大きくして「変化することへの不安」を相対的に小さくすれば、人は「変化すること」を選ぶとしています。
「変化は面倒という不安(危惧1)」<「何もしないことへの不安(危惧2)」

変化への不安
危惧1:
変化することへの不安
新しいものは難しく面倒という不安
危惧2:
変化しないことへの不安
失敗するかもしれないと思い何もしないことへの不安
出所:「入門から応用へ、行動科学の展開」p. 402

この考え方はわかりやすいです。
だれにとっても「変化は面倒」です。
現状がそこそこOKなら変化を起こす必要はないです。

しかし、もし問題があれば、問題に気づいていれば、「変化を起こさずになにもしないことへの不安」は生まれてきます。なにもしなければ問題はどんどん大きくなるからです。

もし問題があっても、問題になんとなく気づいていても、問題に気づきたくない、問題に気づかないようにしていたい、という場合、どうでしょうか。
この場合は、おそらく「変化は面倒」の方が「何もしないことへの不安」に勝つでしょう。その結果、「見て見ぬふり」、「問題の先送り」になっていきます。

よく「思考停止」という表現を聞きますが、問題に気づきたくない、問題に気づかないようにしていたい場合、この思考停止になると思います。世の中でコーチングや気づきが流行っていますが、これは「気づきたくない、気づかないようにしていること」に「気づかせる」作業だと思います。

気づいているのに気づかないようにして問題状況のなかにずっといると、人はだんだん違和感が増し、社会不適応を感じ、体調不良になり。。。心身ともに病気になるのではないかと思います。

変化を重たいものではなく、自分にもできる身の丈にあった楽しいことととらえるようにすれば、目の前の問題にひとつひとつ対処できるのではないでしょうか。


変化に対する動機づけ

環境要因と動機づけ要因、有名なハーツバーグの研究があります。
  • 環境要因:環境的・物理的な要因は、不満か不満じゃないかを決める。
  • 動機づけ要因:気持ちに訴える内的要因は、満足か満足じゃないかと決める。
うるさい、暑い、ものが足りない、給料が低いなど物理的・環境的な要因は、たとえ環境をよくしたとしても、動機づけされることはなく、「不満を解消」するだけ。
いきがい、やりがいがある、喜ばれた、人のためになる、達成感がある、など気持ちに訴える内的要因の場合は、満足感を得られる。


変化を状況対応リーダーシップ®で実行する

状況対応リーダーシップ®で変化を実行するということは、つまり、変化を実行する対象の「変化に対する」レディネスを変化させることです。

レディネスはだれにでもあります。
  • 自分
  • 相手
  • チーム
  • 組織
  • 社会
  • 世界
  • ・・・・・・・・・
変化を実行する対象として、身近な自分や自分の周りにいる相手、自分の仲間たちチーム、もし組織を率いているなら組織、自分が存在する社会、世界。。。いろいろあります。

レディネスは、いつでもどこでも環境の変化や気持ちの変化で、高まったり低くなったりします。強烈なショックを受けたりすると、今までできていたことが、突然できなくなることもあります。

自分、相手、チーム、組織、それぞれの変化へのレディネスを見ながら、対象の内的要因はどうなっているのか、行動科学と状況対応リーダーシップ®ではそのように考えるのが第一歩になります。

変化させるための内的要因を探る方法として、フォースフィールド分析があります。

また、対象を自分にし、自分を変化させる、そのための行動科学・状況対応リーダーシップ®を活用する方法として、S.L.セルフ®があります。

フォースフィールド分析とS.L.セルフ®についても投稿していきます。


参考文献 
  • 「入門から応用へ 行動科学の展開」ハーシィ、ジョンソン、ブランチャード著、山本成二・山本あづさ共訳、生産性出版、2000 
  • 「行動科学入門」株式会社シーエルエス編著、山本成二監修、生産性出版、2005