2011年9月7日水曜日

「目標による管理(MBO)」と状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)

CLS Japan本部 網あづさ

「目標による管理(MBO)」と状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)

「キャリア開発24の扉」(小野田博之編著)では、「キャリア開発を支える人間理解力」のひとつとして、状況対応リーダーシップ®(S.L.理論®)があげられています(p.24)。

状況対応リーダーシップ®もMBO同様、米国で生まれたモデルです。MBO同様、日本独特の誤解も生じます。

よく聞かれるものに、「日本人は米国人と違って温情的なので、リーダーシップ・スタイルは常に協労的行動が多い」というものです。つまり、相手のレディネスが低かろうが高かろうが、協労的行動は常に「高」だ」という指摘や、「レディネスが低い人、高い人」という表現です。

どちらも、レディネスは「人ではなく課題で測定する」という解説と演習を行うことで、ほとんどの方に理解していただけます。そして、ほとんどの場合、「目からウロコ」だと言われます。

相手に自立してもらうには、あるいは自分が自立するにも、この「課題の捉え方」はとても有効だと思います。まず第一に感情的にならないですみます。相手に対して怒りも落胆も感じる必要はないですし、自分に対しても落ち込んだり悩んだりせず、次の第一歩を踏み出せます。

状況対応リーダーシップ®は、行動科学をもとに十分に整理された人間行動論だと思います。この整理された考えによって、沈んだり淀んだりする感情や思考に希望の光が差し込まれると感じます。

一生は長いですから、明るい人間行動を積み重ねて、長い仕事人生、長い個人生活を楽しいものにしていかれればと思います。「キャリア開発24の扉」にも書かれていますが、人生を楽しんでいる人は、創造的にもなりますし、生産的にもなります。まさに、社会に貢献できる人材になります。


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「『目標による管理』と『キャリア開発』を結ぶ24の扉」より抜粋(pp.52-.53)

ブームで終わった人事上のテーマに「目標による管理(MBO)」があります。

MBOの考え方を簡単にいうと、「やらされる仕事よりも、やりたい仕事をしている方が働き手の生産性は高く、創造性も発揮されやすい。だから、本人が自分で目標を設定して主体的に取り組めるようにマネジメントすることがよい」というものです。

失敗したのはMBOなのではなく、「目標を使った評価制度」、つまり「似非(えせ)MBO」だったのです。

MBOを導入して「職場がギスギスした感じになった」「すぐに結果がデルものに目が向いて、長いスパンで仕事を考えなくなった」という状況を招いたのもキャリア開発に結びついていないからです。

キャリア開発と連動していれば、つまり目標が自分のキャリア=仕事人生にとって中長期的にプラスになると思えば目先の評価に左右されない強いコミットメントを持ってその実現に取り組めます。

「MBOは個々の職務について仕事の領域がはっきりしている米国型の組織で生まれたもので、阿吽の呼吸で職務範囲を決める日本型組織に向かない」という理由を上げる人もいます。

しかし、むしろ大切なのは職務記述書が整っているといった環境条件ではなく、その組織のメンバーの成熟度ではないでしょうか。基準書がなくても自分が何をすべきかをメンバーがわかっていれば自分の職務範囲を特定できます。

そもそも阿吽の呼吸で進めていけるのは、その個人が自立できているからです。未熟な指示待ち、あるいは他者模倣しかできないメンバーは自分の思い込んだ範囲にとどまろうとするので、日本型組織の特徴さえ発揮できないのです。

参考文献:「キャリア開発24の扉」小野田博之編著、横山哲夫監修、生産性出版、2011年

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状況対応リーダーシップと目標による管理(MBO) 
<リーダーシップスタイル契約>

<目標による管理>では、リーダーと部下の間が、仕事目標と達成結果の評価方法について合意に達したのち、リーダー行動は一般にS4(低協労/低指示)スタイルに移ることになっている。
だが、状況対応リーダーシップによれば、S4が効果的に機能するには、部下が目標を達成する意欲と能力をもちあわせていなければならない(つまり、R4)。

しかし、レディネス・レベルは仕事によって異なるからいつもこのようにうまくいくとは限らない。経験の足りない、またやる気も起こらない仕事にブツかることがある。リーダーと部下がいったん仕事の目標を決定したら、次のステップは(実際にはあまり行われていないが)、リーダーの適切なリーダーシップ・スタイルを討議・決定することである。

このようなリーダーシップ・スタイル契約(決定)が行われないと、あとで問題が生じる。たとえば、リーダーが部下を全く放っておいたとして、この低協労/低指示な委任的リーダーシップ・スタイル(S4)は果たして適切だろうか、それとも不適切だろうか。この適不適は次の診断のときまで気付かないことになってしまう。

S4スタイルは、部下がかなりのスキルをもっていて、手順もよく知っており、意欲もある場合にのみ効果的である。逆に、目標や仕事について決定した後でも、リーダーが部下のまわりを相変わらずうろうろして指示を与えているとすると、このリーダーの高指示/低協労スタイル(S1)によって、部下は能力のある分野の仕事ですら遂行できなくなってしまう。

リーダーシップスタイル契約を活用する面談スキルアップ演習


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