2007年9月29日土曜日

「確信(対自分)、確信(対他人)」についてのご質問について

S.L.主任研究員 桃井庸介


まずは、日本語訳から整理しておきます。

対という言葉には、誰が相手かという意味を持たせています。ご存知のようにレディネスは課題別ですが、ある特定の仕事や課題、作業の遂行についての自信、確信をもたらす相手が自分か他人かということです。

スライド70の元になる考え方は、「行動科学の展開-新版」のp196~p197に書かれています。すなわち、『レディネスが低い状態では、リーダーが、何を、いつ、どこで、いかに、などをお膳立てし、指図していることを忘れてはならない。すなわち、リーダーが作業の進め方を決めている(Leader-directed=リーダー主導)のである。フォロアーのレディネス・レベルが高くなると、フォロアーは自ら作業遂行に責任をとって、作業の進め方を自分で決定する(Self-directed=本人主導)ようになる。このリーダー主導状態から本人主導的な自律的状態への移行が、適度の気遣いや不安に結びつくのである。』

上記の考え方から、以下のようなことが言えると思います。
1. R1~R2に移行する段階での、特定課題に対する確信は、他者が示してくれたやり方に対して、自信を持て、指示通りにできるようになったという確信と説明できます。
「対他人」を「対他人(分かりやく言えばリーダー)が示したやり方」と説明されても良いと思います。
もう少し付け加えれば、R1~R2の段階では、リーダーに言われたことだけやっていればよいレベルで、「言われたことに関しては、自信はあるぞ」というレベルなのだと思います。

2. R3~R4に移行する段階での、特定課題に対する確信は、自分で考えた、あるいは工夫した、自分のやり方に対して自信を持てること。つまりフォロアーが自分の問題として、自分の責任に基づき、その課題の遂行について自分ひとりでやり遂げる自信、確信と言えます。「今までは、リーダーの言うとおりにやってきたが、これからは、自分で責任を持って、さらに自分なりのやり方を考え、工夫してやっていかなければならない。リーダーの手を離れて自分なりのやり方でやるのは不安があるが、やっていこう」という思いから始まるが、徐々に、自分のやり方に自信を持てるようになり、ひとり立ちを確信できるようになるのだと思います。
という考え方で、同じように「対自分」を「対自分のやり方」という説明をされても良いと思います。

蛇足ですが、R2~R3への移行には、「自分の責任で」というフォロアーの意識がキーワードになります。それゆえ、能力は高いのに(一通りできるようになったのに)不安を覚えると言えます。

3. もう一つの見方は、期待に応えられているという確信です。
確信はレディネスの向上にとって大切な要素です。R1~R2おいては、フォロアーが「リーダーの期待に応えられているのだ」という思いを持つことが自信や確信につながると考えられます。その意味では、「確信(対他人)」は他人(リーダー)の期待に応えられたことによって得られる確信と理解することも可能です。
成長サイクルでは、フォロアーがこうした確信を持つことによって、その課題にさらに動機付けられ、自分の問題として、その課題に取り組むよう(R3、R4に向上すること)に働きかけることの考え方を示しています。

その一つが、褒章です。「リーダーはフォロアーがリーダーの期待に応えたらすぐに褒章すべきである」とハーシィは主張しています。

そうすることで、フォロアーは、「これでいいんだ。よし、リーダーの指示通りにできているんだ。期待通りにできているんだ」という確信を持つようになると言えます。つまり、「リーダーの期待にきちんと応えることができている」という確信を持てるのです。

同様に、「確信(対自分)」は自分が自分に期待することに対して応えられているかによって得られる確信と考えても良いと思います。
退行サイクルの場面で、「自分に自信がなくなった」という表現をする背景には、自分が考えていた自分への期待に応えられないと感じていることが考えられます。

私からの回答というか、私の考え方について述べさせていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。

なお、成長サイクルと退行サイクルは、「カタリストとしてのリーダー」という新しい独立したプログラムとしてまもなく発表する予定です。
ちなみに、そのプログラムの指導手引きには、「他人とは、その課題の遂行に関してのフィードバックをくれる上司、同僚、顧客など・・・」と記述があります。特定課題の遂行に影響を及ぼす人を他人と称しています。そして、そうした他者からの支えや本人の努力を補ってくれることにより確信は得られるという解説があります。この解説は、上記の3.と同じです。

「リーダーや同僚は、その人に、なんとかこちらの期待するレベルになってほしいと思い、その人の課題遂行を支え(適切なフィードバックをし)、その努力を補う(必要な指示的行動と協労的行動をとる)ことで、課題遂行を動機付け、課題遂行レベルを上げようとします。その人はそうした行動を受けて、徐々にその課題の遂行レベルを上げながら、上司や同僚の期待に応えているという実感を得ることで、その課題遂行(上司や同僚の期待に対する)自信、確信を持つようになる」と理解できます。

「カタリストとしてのリーダー」については、S.L.指導員向けの勉強会を開催しようと思っております。その際には、ぜひご参加ください。
リーダーシップ、行動科学は奥が深いです。今後とも共に勉強していければ幸いです。貴重なご質問ありがとうございました。


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